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「日本学術会議会員に任命されなかった6名の学者につき、直ちに任命することを求める声明」を発出いたしました

日本学術会議会員に任命されなかった6名の学者につき、直ちに任命することを求める声明

 

2020年11月24日

 

安保法制を考える司法書士の会

 

 

 当会は、関東圏の司法書士有志で構成され、日本国憲法及び安全保障関連法制を研究し、我が国の法制度の健全な発展に寄与することを目的とする団体である。

 

 先般、菅義偉首相は、日本学術会議が会員に推薦した105名の内、6名を任命せず、その理由を明らかにしていない。

 

 日本学術会議法(以下、「本法」という。)においては、日本学術会議は「独立して」職務を行うものとされ(3条)、会員について、優れた研究または業績がある科学者のうちから日本学術会議の選考した候補者を内閣総理大臣に推薦するものとされ(17条)、内閣総理大臣はその推薦に「基づいて」会員を任命することとされている(7条2項)。

 これら条文の規定からすると、内閣総理大臣が日本学術会議の推薦内容を審査し、任命するかしないかを判断することを、本法は予定していないものと解するのが妥当である。

 また、本法が、従来の学者間での選挙で会員を選ぶ方法から現在の形式に変更された昭和58年の法改正の際に、参議院文教委員会において、当時の丹羽兵助総理府総務長官は、「形だけの推薦制であって、学会のほうから推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」と、答弁している。当時の中曽根康弘内閣総理大臣も、「政府が行うのは形式的任命にすぎません。したがって、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えております。」と、答弁している。

 かかる法律の条文及び政府解釈を前提とすれば、今回の6名の学者を任命しなかったことは、本法3条、7条2項及び17条に違反していることは明らかである。

 さらに、本法7条1項は、「日本学術会議は、210人の日本学術会議員をもつて、これを組織する。」と定めており、半数改選の105名の定員に6名足りない99名しか任命しなかったことは、本法7条1項に違反している。

 以上のような本法に違反する行為は、「法の支配」を無視した行政権の濫用である。

 

また、6名の学者が任命されなかったことは、憲法が保障する「学問の自由」(23条)を侵害する行為である。

「学問の自由」は、戦前の滝川事件や天皇機関説事件等の歴史を教訓に、国家権力が学問の分野に介入し、学問研究、研究発表、学説内容などの学問的活動とその成果について,それを弾圧し、あるいは禁止することは許されないとして、現行憲法において特に規定されたものである。

任命されなかった6名の学者は、過去に安保法制や特定秘密保護法等に反対する意思を表示していたことから、この6名を任命しないことは、政府の方針に反対すると不利益的な取扱いを受けるという疑念を生じさせ、学問的活動に萎縮的効果をもたらすものであって、憲法23条の趣旨に照らし、許されない。

さらに、憲法23条は、個々の研究者の学問的活動の自由のほか、制度的保障としての「大学の自治」をも保障している。その趣旨は、異なる見解をもつ研究者同士が真摯に相互批判や検証を繰り返しながら切磋琢磨していく過程が、真理の探究という科学の営みにとって不可欠であることから、学問的コミュニティに対する国家権力の介入を阻止し、学問的コミュニティ自体の自律性を保障することにある。日本学術会議は大学ではないが、かかる学問的コミュニティの自律性の保障という点では大学の自治の趣旨がそのまま当てはまる。その意味で、6名の学者が任命されなかったことは、憲法23条が保障する大学の自治の趣旨にも反するものである。

 

 司法書士は、「(前略)国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命」としている(司法書士法1条)。6名の学者が任命されなかったことは、「法の支配」を無視するものであり、憲法23条の趣旨を蔑ろにするものである。国民の権利の擁護と自由かつ公正な社会の形成に寄与する法律家として、これを看過することはできない。

 

 よって、当会は、日本学術会議から推薦されているが、未だ任命されていない6名の学者についても、直ちに任命することを求める。

 

 

以上